懲戒処分とは企業秩序を犯すことに対する制裁で、会社内の就業規則などのルールを従業員が破った場合に対する措置です。
会社内の秩序を維持し円滑な会社の運営を図ることを目的としたものです。
懲戒の種類としては
・譴責・注意(戒告)処分、・減給、・出勤停止、・降格、・論旨解雇、・懲戒解雇
などが挙げられます。
法令上、特段に種類は定められていませんので、公序良俗に反しない限り恣意的に使用者の意思や企業としての意志により定めることが出来ます。
なお、懲戒処分を行うに当たって就業規則で定めたものをどう運用するかわからない場合は下記の順序を参考にしてください。
①不祥事の発生
②実態・事実関係の調査
・対象の職員やその上司、被害者などからの聞き取り
・証拠書類の確認
把握した事実をもとに就業規則上の懲戒事由と照らし合わせ、過去の処分例を見て懲戒の種類、度合を検討します
③規則上の手続きの手配
・弁明の機会の付与
・懲罰委員会の設置など
②、③の内容を考慮し処分を決定する
④懲戒処分の実施
実際にどのようなケースでどのように対応するか、モデルケースを提示し上場企業4170社(同規模の非上場企業含む)に調査が行われ下記のような結果が出ています。
横領、酒酔い運転、暴力事件などの刑事罰対象の事件、それに加え情報漏えいなどの企業の印象を悪くし企業の売り上げに直結する不祥事については懲戒解雇処分が多く見られます。
また、下記の集計表には第1位、第2位までの懲戒処分の対応までしか記載していませんが、この結果について興味深いのは全てのケースにおいて先に挙げた懲戒処分の内容(譴責・注意処分から懲戒解雇までの措置)が行われていることで、同じ事柄の不祥事であっても事実、会社ごとに処分の内容、度合いが違っているということです。
このことからも会社の意志により風土や規則が形成されるということが考察できます。
経済状況や法律の制定、その時々の社会の流れによってどのような不祥事が発生し、どのように対処するかは日々変化するものであるので、時機を見て時代を読み先を見通すことは売上に直結する経営だけでなく、社内を管理する経営にも役立つでしょう。
モデルケースに見る懲戒処分の対応
<横領など>
●売上金100万円を使い込んだ
懲戒解雇にする 70.6%
諭旨解雇にする 18.3%
●取引先から個人的に謝礼金等を受領していた
懲戒解雇にする 34.9%
降格処分にする 17.4%
●同僚の売上金の流用を知りながら,報告しなかった
注意処分にする 53.2%
減給処分にする 18.3%
<就業規則違反など>
●事故は起こさなかったが,酒酔い運転のため検挙された
出勤停止にする 25.7%
懲戒解雇にする 21.1%
●終業時刻後に酒酔い運転で物損事故を起こし,逮捕された
懲戒解雇にする 40.4%
出勤停止にする 19.3%
●営業外勤者が業務中に自動車で通行人をはねて死亡させ,本人の過失100%であった
懲戒解雇にする 29.4%
諭旨解雇にする 25.7%
●無断欠勤が2週間に及んだ
懲戒解雇にする 68.8%
諭旨解雇にする 20.2%
●兼業禁止規定があるにもかかわらず,休日にアルバイトをしていた
注意処分にする 29.4%
懲戒解雇にする 19.3%
●社内の通報窓口に連絡をせず,直接マスコミに内部告発をした
判断できない 41.3%
処分対象でない 24.8%
●配転を拒否した
処分対象でない 22.9%
諭旨解雇にする 16.5%
<職場の風紀を乱すなど>
●社外秘の重要機密事項を漏えいさせた
懲戒解雇にする 54.1%
減給処分にする 13.8%
●アダルトサイト等,業務に関係しないサイトを閲覧し,
業務に支障を来した
注意処分にする 59.6%
減給処分にする 20.2%
●就業時間中にインターネットで株取り引きをした
注意処分にする 56.9%
減給処分にする 18.3%
●インターネット上で会社や上司・同僚を中傷していた
注意処分にする 35.8%
出勤停止にする 22.0%
●就業時間外に宗教の勧誘活動を行い,再三の注意にも改めない
注意処分にする 26.6%
懲戒解雇にする 18.3%
●妻子ある上司が,部下と不倫行為を続けていることが発覚した
判断できない 26.6%
注意処分にする 22.0%
●電子メールでわいせつな内容の文書を社内の複数女性に送るなど,セクハラ行為が発覚した
出勤停止にする 28.4%
懲戒解雇にする 22.9%
<私生活上の非行など>
●同僚にストーカー行為を繰り返して,被害を訴えられた
懲戒解雇にする 32.1%
出勤停止にする 22.9%
●満員電車で痴漢行為を行ったことが被害者からの訴えで判明した
懲戒解雇にする 36.7%
諭旨解雇にする 22.9%
判断できない 22.9%
●クレジットカードによる買物のしすぎで自己破産の宣告を受けた
処分対象でない 47.7%
判断できない 24.8%
(財)労務行政研究所の調査による
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